平成16年5月28日(金)に、北海道工業大学&北方建築総合研究所主催のシンポジウム「今冬を振りかえり、都市の豪雪対策を考える」が、旭川市内の北方建築総合研究所で開催されました。
シンポジウムでは、防災科学技術研究所新庄支所長の佐藤威氏が「吹雪の発生メカニズムと主な障害について」、鹿島建設技術研究所上席研究員の本郷剛氏が「高層建築物で発生するビル風と吹雪害との関わり」と題する基調講演を行いました。
また、その後パネルディスカッションに入り、基調講演で提供された内容をもとに、最近の建築や道路の分野で提案・実践されつつある雪対策や、今冬の豪雪をふまえた反省と今後の課題などについて話題提供と討議が行われました。北海道工業大学の苫米地司教授をコーディネータに、北方建築総合研究所の堤拓哉氏が「建物まわりの吹きだまり対策」、苫前町役場の星輝美氏が「公共施設の風雪対策」、(株)高岡建築設計事務所の瀬尾寛美氏が「風雪障害を考慮した建物設計」について話題提供されました。
加治屋室長からは、「道路情報を活用した風雪害対策-都市の豪雪対策の視点から-」と題し、以下のような話題提供を行いました。
・今冬のような暴風雪は極めてまれな災害
→ ハードよりもソフト対策の必要性
→ 普段と変わらぬ交通行動の反省
・情報の活用と自らの判断で混乱と危険を回避
→ 情報提供の有効性
→ 官民協働の必要性の認識
・スマート札幌、冬の峠案内、しりべし*e街道
→ 冬期気象条件に応じた交通需要マネジメント
→ 気象条件に応じた交通行動(危険回避)
→ 官民連携による冬期道路情報の収集・提供
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| ▲発表する加治屋 | ||
当日は52名の参加者でほぼ満員の会場となり、熱心な討論が行われました。
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平成16年2月に開催された第47回北海道開発局技術研究発表会で発表された論文の中で、「積雪寒冷地における舗装のライフサイクルコスト分析」(清野,岳本,石田)が研究機関の部で北海道開発局長賞を受賞しました。
同論文は舗装マネジメントシステムの考え方を用いて、舗装の維持修繕方法を最適化することによるライフサイクルコスト縮減の可能性を検証したもので、厳しい財政状況下の道路行政への適用可能性の高さが高く評価されました。
5月21日に【北の道リサーチニュース:第8号(2004年5月)】を発行しました。
このメールニュースは、北海道開発土木研究所道路部が寒地道路技術の情報発信基地を目指して、行政や民間企業、大学等の専門技術者等へ研究・調査成果等の最新情報を提供するものです。
皆様の事業推進や技術向上にお役立ていただければ幸いです。
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平成16年5月20日(木)に、北海道技術士センター防災研究会の平成16年度総会が当所講堂で開催されました。総会後の講演会において、当所の西村泰弘道路部長が「まちづくりと防災を考える」と題する講演を行いました。
講演では、「まちづくり」が行政主体の「町づくり・街づくり」から、住民や地域コミュニティ主体の平仮名の「まちづくり」へ変わってきて、住民の主体的で、自主的で、責任と自覚のある活動が求められ、「まちの防災力」にとっても住民の主体的な活動が重要であることが主張されました。
以下が、講演のポイントと内容です。
① 「まち」と「まちづくり」
② 「まちづくり」の主体のコミュニティ
③ 地域の価値と感性工学
④ 市町村財政と公共サービス・公共経営
⑤ 社会的使命感とミッションマネジメント
⑥ 住民の主体的活動「タイディタウン運動」
⑦ 防災とまちづくり
「まちづくり」が、行政が行う都市計画・都市開発などハードの事業中心の「町づくり・街づくり」から、住民や企業、NPOなどが行う商業や福祉、教育、文化などの活動も含めた幅広い「まちづくり」へ変わってきた。そして、田村明先生の著書「まちづくりの実践」を引用して、「まちづくり」は「よい"まち"」をつくることで、「住みやすい」だけでなく、「住んでいてよかった」と積極的に評価できる「住むに値する」まちをつくることである。そして、自分の「まち」を良くしたいという思いやロマンから発生する住民主体の活動が「まち」の活力を生む。このように「まちづくり」の担い手が、行政主体から住民主体に変わってきた。
また、「まちづくり」は、地域の価値の発見で、地域の魅力には自然や風景、地場産品などがあるが、これだけではなく人の営みも地域の価値である。「まち」の歴史や文化、事件、人物など出来事が「まちづくり」の魅力でもあり、これを見つけ出す手法として「感性工学」や「風土工学」が可能性を与えてくれている。
「感性工学」は、広島大学名誉教授の長町三生先生が生みの親で、「顧客の感性を測定し、それを設計に盛り込む技術」であり、これまで工業デザインの分野で発達してきたが、最近では地域の魅力づくりや住民との合意形成プロセスに「感性工学」が活かされ始めている。
一方、これまで「まちづくり」を引っ張ってきた自治体が、財政状態が厳しくなり、住民との協働による「まちづくり」が模索され始めており、NPM(New Public Management)やPPP(Public Private Partnerships)などの競争と市場原理を重視した公共政策や官民のパートナーシップの政策が大きなテーマになってきた。これからの「まちづくり」は、行政が規則や制度で企業や住民を統制したり誘導する時代ではなく、企業や住民の活動を行政が支援する時代である。
そこで、住民の自覚と主体性を導き、真のパートナーシップを築くには、民間企業で取り組まれている「ミッションマネジメント」の発想が必要となっている。ミッションマネジメントとは、企業の存在意義や目的、価値観を経営方針のトップに掲げ、経営者から末端の従業員まで全員が同じ意識を持つことにより、経営の向上を図ろうというもの。これを、「まちづくり」にも当てはめ、行政と企業、住民が同じ目的・目標・価値観を持つことにより、主体的で意欲的な協働のまちづくりを進めることが必要ではないだろうか。
アイルランドには、住民主体の草の根型の美しいまちづくり活動「タイディタウン運動」がある。これは、アイルランドで一番「きれいな美しいまち」を表彰する制度である。自然や歴史的建造物の保存・再生、街路や商店街、住宅街の景観整備、道路や公園などの清掃、花植などの住民の主体的な活動を表彰するものである。「まちの美しさ」とは、「まち」の景観だけではなく、住民が主体的に協働でまちづくりに取り組む生き生きとした姿ではないだろうか。
これらを受けて、最後に「まちの防災」は、まちづくりへの住民の参画や協働による「地域防災力」の向上ではとの投げかけがあり、洪水ハザードマップ作成への住民参画や身近な公園への防災倉庫の設置などによる住民の自主的な防災活動の育成事例が紹介され、まちの防災力の向上には、日頃の住民の主体的な身近なまちづくりへの参画が大切であると主張された。
TRB(全米運輸研究会議)主催の「第6回除雪と雪氷対策技術に関する国際シンポジウム」が、6月7~9日 米国ワシントン州スポケイン市で開催されます。
北海道開発土木研究所からは、TRB冬期道路管理委員会の委員を務めている加治屋防災雪氷研究室長を始め浅野交通研究室長など7名が参加し、研究発表を行います。
また、ワシントン州道路局における冬期道路管理手法の視察を合わせて行うこととしています。
プログラムなど詳しくはこちらのURLをご覧下さい(英語)
→ http://www.trb.org/Conferences/Snow/
http://northern-road.jp/navi/index_time.htm