交通研究室の浅野基樹室長は、平成17年12月26日付けで、博士(工学)の学位を授与されました。学位論文の題目は、「北海道における冬期道路管理の政策評価に関する研究」です。
本研究は、スパイクタイヤ規制を冬期道路管理における一つの大きな政策としてとらえ、北海道の地域特性や気象特性に基づいた政策評価を試み、目的や目標が達成されたかどうか、残された課題は何かを明確化したものです。
得られた主な成果は以下のとおりです。
まず、我が国、特に北海道における雪寒事業の歴史を、その時代の法制度や除雪防雪技術の特徴により区切って整理し、スパイクタイヤ規制以降、その技術の中心が路面管理に移行してきており、スパイクタイヤ規制は冬期道路管理の歴史上の大きな転換点であったことを示しました。
次に、スパイクタイヤ普及の背景、我が国におけるスパイクタイヤ規制に関する社会的背景、スパイクタイヤ規制法施行までの行政的経緯や技術及び社会的検討内容、およびスパイクタイヤ規制後の成果や課題について整理し、それら一連の経緯から、事前評価の不十分性やスパイクタイヤ規制法附帯事項の遵守としての冬期道路マネジメントの必要性を示した。
また、スパイクタイヤ規制に係わる帰着便益を計算し、スパイクタイヤ規制によって得られた良好な環境に対し、道路利用者は相当な対価を支払っていることを示した。
さらに、政策における投入、活動、結果、および成果の連鎖関係を明らかにするロジックモデルを用いて、評価を試み、スパイクタイヤ規制の目的は達成されたものの、事前評価の不十分性や付帯決議の遵守としての「冬期道路管理マネジメントシステム」の導入可能性を改めて指摘した。
最後に、今後の課題として、冬期道路管理技術のさらなる開発促進、冬期道路管理マネジメントに資するアウトカム指標のモニタリング、「冬期道路管理マネジメントシステム」の導入、および全国一律ではない北海道の地域特性・気象特性に合致した北国の街づくりが必要であることを指摘した。
浅野室長は、昭和56年3月に北海道大学工学部土木工学科を卒業し、同4月に北海道開発庁に採用になり、函館開発建設部を皮切りに、途中、経済企画庁および外務省への出向を挟み、北海道開発局釧路開発建設部道路第1課長、同建設部道路計画課補佐、同室蘭開発建設部苫小牧道路事務所長を歴任の後、平成12年4月から当研究所道路部交通研究室に勤務しております。
当研究所では、冬期道路管理に係わる研究、交通安全対策に係わる研究、高規格道路の構造や整備効果に係わる研究を実施しており、現在、札幌市のパーソントリップ調査検討会作業部会顧問などの公職や北海道土木技術会道路研究委員会幹事長などで活躍しております。
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