当研究所道路部防災雪氷研究室の加治屋安彦室長には、北海道大学に学位論文を提出中のところ、平成16年9月24日付けで博士(工学)の学位が授与されました。学位論文は「寒地ITSの利用者ニーズと有効な導入方策に関する実証的研究」です。
本研究は、日本の積雪寒冷地特有の諸事情や、近年の社会環境の変化もふまえ、積雪寒冷地の地域ITS(寒地ITS)の利用者ニーズを詳細に分析して、発展シナリオを明らかにするとともに、必要な新技術を開発し、有効な導入方策をフィールド実験等により実証的に提案したもので、以下のような研究成果からなります。
1)積雪寒冷地の地域ITS(寒地ITS)の将来シナリオ、技術開発の基本的な方向性を明示した。
2)ミリ波レーダを活用した安全走行支援システムを開発し、冬期道路の切実なニーズに応えるITSを
提示した。
3)特別なインフラを用いずに、インターネットのような汎用的なインフラと、パソコンや携帯電話等の
汎用的な機器で、地方部が抱えるニーズに応えるITSを提示した。
4)特に、インターネットの次世代言語XMLの道路情報分野への活用に着目し、道路用Web記述言語
RWMLを開発して、ユビキタス・ネットワーク社会における地域ITSの構築を可能にした。
本研究の成果は、日本の北海道のみならず、世界中の積雪寒冷地域で活用可能なものであり、PIARC(世界道路協会)やTRB(交通運輸研究会議)、ITS等の国際会議を通じて海外にも紹介され、国際的にも注目されています。
加治屋室長は、昭和32年千葉県生まれ。昭和56年3月に東京工業大学工学部土木工学科を卒業。同年4月に北海道開発庁に入庁し、札幌開発建設部、環境庁に勤務後、昭和61年4月から土木試験所(のちの北海道開発土木研究所)に勤務、現在に至っています。この間、平成元年から2年にかけて1年間、米国連邦道路庁(FHWA)の関連機関であるStrategic Highway Research Program(SHRP)に出向し、道路気象情報システムや冬期道路管理分野の研究マネジメントに携わった経歴を有しています。
平成7年5月に室長に就任後、寒地ITSに関する研究に本格的に着手し、平成12年3月には「道路の安全走行支援システム」で特許を取得。また最近では、PIARCやTRBの冬期道路管理委員会のメンバーとして、国際的な研究活動でも幅広く活躍しています。
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▲学位授与式(2004年9月24日)において |
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