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北海道技術士センター防災研究会の講演会で西村道路部長が講演を行いました


 平成16年5月20日(木)に、北海道技術士センター防災研究会の平成16年度総会が当所講堂で開催されました。総会後の講演会において、当所の西村泰弘道路部長が「まちづくりと防災を考える」と題する講演を行いました。
 講演では、「まちづくり」が行政主体の「町づくり・街づくり」から、住民や地域コミュニティ主体の平仮名の「まちづくり」へ変わってきて、住民の主体的で、自主的で、責任と自覚のある活動が求められ、「まちの防災力」にとっても住民の主体的な活動が重要であることが主張されました。

 以下が、講演のポイントと内容です。
 ① 「まち」と「まちづくり」
 ② 「まちづくり」の主体のコミュニティ
 ③ 地域の価値と感性工学
 ④ 市町村財政と公共サービス・公共経営
 ⑤ 社会的使命感とミッションマネジメント
 ⑥ 住民の主体的活動「タイディタウン運動」
 ⑦ 防災とまちづくり

 「まちづくり」が、行政が行う都市計画・都市開発などハードの事業中心の「町づくり・街づくり」から、住民や企業、NPOなどが行う商業や福祉、教育、文化などの活動も含めた幅広い「まちづくり」へ変わってきた。そして、田村明先生の著書「まちづくりの実践」を引用して、「まちづくり」は「よい"まち"」をつくることで、「住みやすい」だけでなく、「住んでいてよかった」と積極的に評価できる「住むに値する」まちをつくることである。そして、自分の「まち」を良くしたいという思いやロマンから発生する住民主体の活動が「まち」の活力を生む。このように「まちづくり」の担い手が、行政主体から住民主体に変わってきた。
 また、「まちづくり」は、地域の価値の発見で、地域の魅力には自然や風景、地場産品などがあるが、これだけではなく人の営みも地域の価値である。「まち」の歴史や文化、事件、人物など出来事が「まちづくり」の魅力でもあり、これを見つけ出す手法として「感性工学」や「風土工学」が可能性を与えてくれている。
 「感性工学」は、広島大学名誉教授の長町三生先生が生みの親で、「顧客の感性を測定し、それを設計に盛り込む技術」であり、これまで工業デザインの分野で発達してきたが、最近では地域の魅力づくりや住民との合意形成プロセスに「感性工学」が活かされ始めている。
 一方、これまで「まちづくり」を引っ張ってきた自治体が、財政状態が厳しくなり、住民との協働による「まちづくり」が模索され始めており、NPM(New Public Management)やPPP(Public Private Partnerships)などの競争と市場原理を重視した公共政策や官民のパートナーシップの政策が大きなテーマになってきた。これからの「まちづくり」は、行政が規則や制度で企業や住民を統制したり誘導する時代ではなく、企業や住民の活動を行政が支援する時代である。
 そこで、住民の自覚と主体性を導き、真のパートナーシップを築くには、民間企業で取り組まれている「ミッションマネジメント」の発想が必要となっている。ミッションマネジメントとは、企業の存在意義や目的、価値観を経営方針のトップに掲げ、経営者から末端の従業員まで全員が同じ意識を持つことにより、経営の向上を図ろうというもの。これを、「まちづくり」にも当てはめ、行政と企業、住民が同じ目的・目標・価値観を持つことにより、主体的で意欲的な協働のまちづくりを進めることが必要ではないだろうか。
 アイルランドには、住民主体の草の根型の美しいまちづくり活動「タイディタウン運動」がある。これは、アイルランドで一番「きれいな美しいまち」を表彰する制度である。自然や歴史的建造物の保存・再生、街路や商店街、住宅街の景観整備、道路や公園などの清掃、花植などの住民の主体的な活動を表彰するものである。「まちの美しさ」とは、「まち」の景観だけではなく、住民が主体的に協働でまちづくりに取り組む生き生きとした姿ではないだろうか。
 これらを受けて、最後に「まちの防災」は、まちづくりへの住民の参画や協働による「地域防災力」の向上ではとの投げかけがあり、洪水ハザードマップ作成への住民参画や身近な公園への防災倉庫の設置などによる住民の自主的な防災活動の育成事例が紹介され、まちの防災力の向上には、日頃の住民の主体的な身近なまちづくりへの参画が大切であると主張された。

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